苔テラリウムを美しく仕上げる「最後のひと手間」が化粧砂です。
苔そのものの緑も魅力的ですが、白砂・黒砂・ガラスサンドなどを加えることで、景色に奥行きやストーリーが生まれます。
しかし、「どの砂を選べばいいの?」「厚く敷いたらダメ?」「100均のカラーサンドって使える?」といった疑問を持つ方も多いはず。
この記事では、苔テラリウム作家の視点から、素材・色・粒度・厚み・手順を数値で示しつつ、失敗例とその対処法まで網羅して解説します。
化粧砂は「飾り」以上の役割がある
見栄えを決定づける
苔の緑だけでも十分きれいですが、化粧砂を加えると景色に「締まり」が出ます。黒砂で苔がぐっと映え、白砂を敷けば清らかな小道や枯山水風に。まさに「景色の額縁」となる存在です。
管理を助ける
意外に知られていませんが、化粧砂は管理面でもメリットがあります。
- 土跳ねや苔の根元の汚れを防ぐ
- 水やりの水跡を目立たなくする
- ガラス面との見切りができ、仕上がりが清潔に見える
景観の物語性
苔テラリウムは「小さな世界」。化粧砂はその世界にテーマや物語を与える素材です。
- 白砂で「山寺の石庭」
- ガラスサンドで「泉や浜辺」
- 黒砂で「深山の小道」
素材別の違いと向き/不向き
自然砂(川砂・珪砂・溶岩砂)
- 特徴:発色は控えめでナチュラル。粒に重さがあり動きにくい。
- 向き:和風庭園・渓流表現・落ち着いた作品。
カラーサンド(着色砂)
- 特徴:青・赤・黄色など発色が良く、テーマ表現に便利。
- 注意点:安価なものは染料が落ちることあり。苔に触れると変色や弱りの原因に。
- おすすめ用途:苔と直接接触しない部分で「海・道・模様」を表現。
ガラスサンド/シーグラス
- 特徴:光を反射してキラキラ輝き、水辺や泉の表現に最適。
- 注意点:光を集めすぎると苔に藻が発生しやすい。
- おすすめ用途:水面・泉・浜辺のアクセント。
黒砂(玄武砂など)
- 特徴:苔の緑が最も映える。シックで締まりがある。
- 注意点:粉が多いとガラスが白濁する。使用前にしっかり洗浄。
和風砂(白砂・砂利)
- 特徴:日本庭園の枯山水を思わせる。スジ目を付けることで「水流」を表現できる。
100均と園芸/アクア用の違い
- 100均:安く種類豊富だが、粒度が不揃いで着色強度が低い場合あり。
- 園芸店/アクアショップ:粒径が均一で、洗浄済みが多い。苔に安心して使える。
粒度と厚みの“数値基準”

粒度の目安
- 微細砂(0.1〜0.5mm):道や浜辺の表現。舞いやすいので扱いに注意。
- 細粒(0.5〜1mm):最も万能。自然な景色に使いやすい。
- 中粒(1〜3mm):見切りや縁取りに。動きにくく管理が楽。
- 粗粒(3mm以上):砂というより小石。境界線やアクセント向き。
厚みの目安
- 基本:0.5〜2mm(砂一枚を敷いた程度が理想)
- NG例:厚く盛りすぎると苔が蒸れ、呼吸や光合成を妨げる。
砂流れを防ぐ見切り材
- 軽石を縁に埋める
- 薄板石を“土止め”に使う
- 透明アクリル板で目立たない見切りを作る
苔×化粧砂の相性マップ
- タマゴケ × 白砂:清らかで和風な景色
- コツボゴケ × 黒砂:コントラストが強く映える
- ホソバオキナゴケ × 自然砂:野趣ある庭風
- ヒノキゴケ × 白砂+小石:山寺や石庭の雰囲気
- ウィローモス × ガラスサンド:泉・渓流・水辺の演出
※ポイント:苔と砂は直接触れさせないのがコツ。段差や石を挟んで物理的に区切ると管理が楽です。
仕上がりが変わる手順と道具
手順の鉄則
- 見切り材で区切りを作る
- 一度“仮敷き”→苔を植える→最後に仕上げ砂を薄く敷く
道具
- ミニスプーンや竹製スコップ
- 紙の“砂流し樋”(細い部分に注ぐと便利)
- ピンセット
- ブロワーやコスメ用ブラシ(掃除用)
- スポイト(点滴水やり用)
固着のコツ
霧吹きでは砂が飛んでしまうため、スポイトで点滴するのがおすすめ。最後に容器のガラスを拭き上げれば完成度が高まります。
失敗あるあると即レスキュー
砂が苔にかかってしまう
- 原因:霧の水圧/砂を後から撒いた
- 対策:苔を植える前に砂を敷き、最後に補正程度に撒く
ガラスが白く濁る
- 原因:砂の粉を洗浄していない
- 対策:使用前に水で十分すすぐ、乾かしてから敷く
カラーサンドで苔が弱る
- 原因:染料の溶出
- 対策:苔に触れない設計にする、無害素材を選ぶ
苔が蒸れて枯れる
- 原因:砂を厚く敷きすぎた
- 対策:0.5〜2mmに抑える
砂面に緑藻が出る
- 原因:光が強すぎ+湿度過多
- 対策:遮光カーテン越しの光/LEDなら照射時間を短く
テーマ別レイアウト3例

和庭風
白砂に石段を配置し、苔で縁取り。スジ目を付ければ枯山水風に。
渓流風
粒径の違う自然砂を3層に重ね、転石を置くと川の流れを演出。
浜辺風
ガラスサンドで斜めの傾斜を作り、貝殻や流木を配置。足跡ラインを描くとリアル。
メンテナンス
- ブロワーやブラシで砂面を清掃
- 苔片やホコリはピンセットで除去
- 汚れた部分は部分的に砂を剥がし、新しい砂を追い敷き
- 交換目安は3〜6ヶ月
どこで買う?おすすめの入手先
- 100均:色遊びや小規模作品向け
- 園芸店:自然砂や黒砂が入手しやすい
- アクアリウムショップ:粒径や素材の品質が安定
購入時は「粒径表記・洗浄済み・着色方法」をチェックしましょう。
Q&A(よくある質問)
Q:化粧砂は必須?
A:必須ではありませんが、仕上がりと管理のしやすさが格段に上がります。
Q:どのくらい敷く?
A:0.5〜2mm程度。厚すぎはNG。
Q:霧吹きで砂が飛ぶ!
A:点滴やスポイトを使いましょう。
Q:100均の砂でも大丈夫?
A:苔に直接触れなければOK。発色が弱い場合は交換も検討。
Q:カビが出た!
A:砂そのものは原因ではないことが多いです。湿度・通風・光量を調整してください。
まとめ:化粧砂は“最後の一筆”
- 色は「苔を引き立てる」基準で選ぶ
- 粒度は細〜中、厚みは0.5〜2mmが理想
- 苔と砂は物理的に分ける
- 固着は点滴、霧は仕上げ程度
- トラブルは粉の洗浄・光量・通風で解決
化粧砂は単なる飾りではなく、苔テラリウムを「作品」として完成させる重要な要素です。正しい選び方と使い方をマスターして、自分だけの小さな世界をより美しく仕上げてください。
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