はじめに — ソイルは“テラリウムの命”を支える見えない主役
ガラスの中に広がる小さな世界。
苔が生き生きと緑を広げ、水滴が光を受けて輝く瞬間──
そんな「テラリウムの美しさ」を支えているのが、ソイル(土壌)です。
ソイルはただの“土”ではありません。
水分を蓄え、空気を通し、苔や植物の根を支える「命の基盤」。
適したソイルを選ぶことで、苔の緑は長く保たれ、ガラス越しの景色が安定します。
私(おるさん)自身、苔テラリウムを始めた頃は「土なら何でもいい」と思っていました。
しかし、間違ったソイルを使ったことで藻が発生したり、カビが広がったり…。
失敗のたびに「ソイルの選び方ひとつで、世界は変わる」と実感しました。
この記事では、苔テラリウムやビバリウムに使うソイルの基礎知識・種類・選び方・ブレンド方法・メンテナンスを、経験とデータをもとに丁寧に解説します。
ソイルとは?テラリウムにおける役割と特徴
「土」「砂」「ソイル」の違い
まず押さえたいのは、「ソイル=土」ではないということ。
- 土(土壌):自然界の有機物を多く含み、雑菌や栄養も豊富。管理が難しい。
- 砂:排水性は高いが、水を保持しない。乾燥気味の環境向き。
- ソイル:人工的に焼成された粒状素材。清潔・軽量・通気性に優れる。
テラリウムでは、「清潔で安定した環境を保つ」ための素材として、焼成ソイルやアクアソイルが使用されることが多いです。
ソイルの4つの基本機能
- 保水性:水分を適度に保持して苔を潤す。
- 排水性:余分な水を下へ逃がし、根腐れを防ぐ。
- 通気性:微生物や苔の根が呼吸できる。
- 安定性:粒が崩れにくく、見た目のレイヤーを保つ。
つまり、ソイルは「呼吸する土台」。
苔や植物だけでなく、テラリウム全体の生態系バランスを支える重要な要素なのです。
ソイルの種類と特徴を知ろう
① アクアソイル(ADA、GEXなど)
水草育成用として知られる「アクアソイル」。
微量の栄養分を含み、弱酸性の環境を作るため、苔にも適しています。
ただし、栄養分が多すぎると藻の発生につながることもあるため、その点は注意が必要です。
- ✅ 保水力:高い
- ✅ 通気性:中程度
- ⚠️ 栄養過多による藻リスクあり
② 焼成ソイル(黒・茶色タイプ)
もっとも安定していて扱いやすいのが「焼成ソイル」。
高温で焼き固めてあるため、雑菌が少なく、長期間崩れません。
苔・観葉植物・爬虫類ケージなど、幅広い用途に使えます。
- ✅ 清潔でカビに強い
- ✅ 長持ちする
- ✅ 見た目が自然で美しい
- 💡 苔テラリウム初心者に最もおすすめ
ソイルの選び方 — 用途別おすすめ
苔テラリウム向け

- 通気性+保水性が高い焼成ソイルまたはアクアソイル。
- 栄養が少ない方が、苔の緑が長持ちします。
- 湿度が安定するクローズドタイプとの相性◎。
ビバリウム(両生類・爬虫類)向け
アカハライモリやヤモリなど、生体を飼う場合は通気と保湿のバランスが重要。
底に軽石を敷き、中層にソイル、上層に苔や腐葉土を重ねると、自然の湿地環境を再現できます。
土を露出していると、爬虫類などが口に含んでしまう可能性もあるため、気を付けましょう。
観葉植物・多肉向け
- 排水性を確保するために軽石やパーライトを混ぜる。
- 根腐れ防止のため、底石層をしっかり確保。
ソイルの使い方 — 層構造が世界を作る
基本の3層構造
- 排水層(底石・ハイドロボール)
- ソイル層(保水・通気)
- 苔・植物層(緑の世界)
ガラス越しに見える層のグラデーションが、テラリウム全体の印象を左右します。
たとえば、濃い色のソイルに明るい苔を合わせると、深みが生まれます。
ソイルのメンテナンス — 「替える」のではなく「育てる」感覚で
劣化のサイン
- 粒が潰れて泥状になってきた
- 水が濁る・臭う
- カビや藻が目立つ
半年〜1年に一度の交換が目安ですが、すべて入れ替える必要はありません。
表層だけ入れ替えたり、軽く撹拌して通気を改善するだけでも効果があります。
ソイルを長持ちさせるコツ
- 水のやりすぎを避ける
- 通気のために週1回はフタを開ける
- 光量を調整して藻を抑える
- 表面の苔を軽く整える
「テラリウムを育てる」という意識で向き合うと、ソイルも生きた素材に見えてきます。
水のやりすぎも避けたいところですが、乾燥しすぎると少しでも斜面にした作品などは一気に崩れてしまう可能性もあります。
土で作ったものももちろんですが、適度な水分バランスを保てるよう注意してみましょう。
トラブル事例と対策
| トラブル | 原因 | 対策 | 
|---|---|---|
| 藻が生える | 栄養過多・光量過多 | ソイル交換・遮光・水換え | 
| カビが出る | 通気不足 | フタを開ける・除菌スプレー | 
| 苔が黒ずむ | 水質悪化 | ソイルの一部入れ替え | 
| 匂いが出る | バクテリア繁殖 | 乾燥・換気・底石清掃 | 
私自身も、初期の作品で「アクアソイルを厚く敷きすぎて藻だらけ」になった経験があります。
以後、焼成ソイル+薄層設計に変えたことで安定しました。
最後に — “小さな地球”を足元に育てるということ

ソイルを選ぶという行為は、あなたのテラリウムの“地球”を設計することです。
その中で水がめぐり、苔が光を受け、微生物が呼吸する。
そんな循環を支えるのが、見えない土の力。
【まとめ】
- ソイルはテラリウムの基盤であり、保水・通気・安定を司る。
- 焼成ソイルや赤玉土ブレンドが初心者にもおすすめ。
- 藻やカビは、光量・通気・水分管理で防げる。
- 長く美しく保つコツは、「交換より育成」の意識。
【関連リンク】

 
  
  
  
  




