京都という街を訪れるとき、多くの人は空を見上げます。高くそびえる五重塔、鮮やかに色づく紅葉、あるいは歴史を刻んだ寺院の重厚な屋根。しかし、私たち olmo+(オルモプラス) が提案したいのは、その正反対。視線をグッと下げ、地面すれすれの「足元」を見つめる旅です。
神戸・長田から電車に揺られて約1.5時間。そこには、ガラスの器の中に閉じ込めたくなるような、完璧な「ミクロの森」が無数に広がっています。今回は、苔テラリウム作家の視点から、金閣寺や清水寺といった超有名スポットに隠された苔の魅力、具体的な観察の楽しみ方、そして長田での暮らしにそのエッセンスを持ち帰る方法を、たっぷりと紐解いていきます。
1. なぜ、今「苔」なのか。olmo+が考える自然との距離感

忙しない日常と、苔の時間の流れ
神戸・長田の街は、古くからの下町情緒と、ものづくりの活気に溢れています。日々、仕事や家事に追われていると、私たちの感覚は知らず知らずのうちに「速い時間」に飲み込まれてしまいます。 そんな中、olmo+が提案している苔テラリウムは、いわば「時間のスローダウン」装置です。苔の成長は驚くほどゆっくりです。1ミリ伸びるのに数ヶ月かかることもあります。その「遅さ」に寄り添うことは、現代人にとって最大の贅沢かもしれません。
苔テラリウムは「風景の翻訳」
私たちが制作するテラリウムは、単に植物を植えた容器ではありません。それは、私たちが山や森、あるいは京都の古い境内で見つけた「感動」の翻訳です。 「あの石の陰に生えていた苔の湿り気」「木漏れ日が当たった瞬間の輝き」 そうした一瞬の風景を、長田の日常に持ち帰るための器。京都を「苔の視点」で歩くことは、自分の中にその翻訳の素材(インスピレーション)を蓄える作業なのです。
2. 長田から京都へ。日常の延長にある「聖域」へのアクセス
「京都は少し遠い」というイメージをお持ちかもしれませんが、神戸・長田からのアクセスは驚くほどスムーズです。車での移動も快適ですが、電車を利用すると、移動時間さえも「心を整えるプロローグ」に変わります。
電車でのスマートな行き方
長田エリアにお住まいの方なら、主に以下の2つのルートが便利です。
- JRを利用する場合: 「新長田駅」から快速で「三ノ宮駅」へ。そこから新快速に乗り換えれば、京都駅まで約50分。乗り換えを含めても、1時間20分ほどで京都の玄関口に到着します。
- 阪急電鉄を利用する場合: 「高速長田駅」から神戸線特急に乗り、「十三駅」で京都線に乗り換え。終点の「京都河原町駅」まで、街の移り変わりを眺めながらのんびりと向かうルートです。
車窓から見える風景が、長田の住宅街から大阪のビル群、そして京都の低い家並みへと変わっていく。その変化を感じながら、「今日はどんな緑に出会えるだろう」と想像を膨らませる時間は、すでに癒しの始まりです。
3. 超有名観光地こそ、実は「苔のパラダイス」だった

「苔寺のような特別な場所に行かないと、綺麗な苔は見られないのでは?」と思われるかもしれません。しかし、実は誰もが知るあの名所にも、息を呑むような苔の風景が広がっています。
【金閣寺(鹿苑寺)】黄金の輝きを支える?深い緑の絨毯

誰もがその煌びやかな舎利殿に目を奪われる金閣寺。しかし、金閣に辿り着くまでにも目を向けてほしい苔のじゅうたんがあります。
- 作家の視点: ここの苔は、密度が非常に高く、まるで厚手のカーペットを敷き詰めたようです。特に木々の根元に寄るように広がる苔のグラデーションは、自然が描いた最高のアート。黄金の楼閣だけでなく、その「土台」となっている緑の美しさに気づくと、金閣寺の印象はガラリと変わります。
【清水寺】歴史を物語る石垣の「住人」

「清水の舞台」で有名な清水寺。多くの参拝客が景色を楽しむために上を向きますが、ぜひ参道や境内の古い石垣に注目してみてください。
- 作家の視点: 長い年月を経て積み上げられた石の隙間には、ちょこんと可愛らしい苔たちが根付いています。石垣の垂直な面で生きる苔は、平地の苔とはまた違う「たくましさ」を感じさせます。雨水が伝う石の表面、わずかな土の溜まり場……そんな小さな隙間を住処にする苔の姿は、テラリウムの中に石を配置(石組み)する際の最高の教科書になります。
4. 苔の視点で巡る、京都のおすすめエリア(穴場編)
有名スポットを堪能した後は、少し静かな場所で苔と向き合うのも贅沢な時間です。
【大原エリア】三千院
「有清園」に広がる杉苔(スギゴケ)は、まるでおとぎ話の世界。
- 作家の視点: 苔の中に佇む「わらべ地蔵」を見てみてください。苔が時間をかけて地蔵を優しく飲み込んでいく姿は、テラリウムで表現したい「時間経過の美」そのものです。
【嵯峨野エリア】祇王寺
竹林に囲まれた、まさに「苔の庭」。
- 作家の視点: ここは、種類の異なる苔が混在しているのが特徴です。ホソバオキナゴケの中にヒノキゴケが顔を出す。テラリウムでの「混植」のヒントがここにあります。
5. 苔の種類を知ると、京都歩きはもっと楽しくなる
京都で見かける代表的な苔を知っているだけで、あなたの旅は「ただの緑」から「名前のある命」への出会いに変わります。
- ホソバオキナゴケ(山苔): こんもりとしたクッション状に育ちます。テラリウムの「地面」の主役です。
- ヒノキゴケ(イタチのしっぽ): ふわふわとした長い葉を持ちます。ミニチュアの「森」を表現するのに最適です。
- スギゴケ: 立ち上がった姿が小さな杉の木のよう。京都の庭園に格調高さを与える存在です。
6. 実践!苔を「観察」するためのマナーとコツ
触らない、踏まない、持ち帰らない
苔は非常に繊細です。踏めば再生には何年もかかります。また、一握りの採取も厳禁。その感動は、ぜひ写真に撮るか、記憶に焼き付けてolmo+へ持ってきてください。
「雨の日」こそがベストコンディション
雨は苔にとって「最高のステージ」です。乾燥して休眠していた苔が、雨を得て一斉に葉を広げ、透き通るような緑を放つ。この美しさを知ると、雨の日の京都が待ち遠しくなります。
7. 京都から長田へ。記憶を形にするプロセス
京都でたくさんのインスピレーションを浴びた後、長田に戻ってきたあなたを待っているのは、自分の手で「再現」する時間です。
旅の写真を整理する
「金閣寺のあのふかふかの緑」「清水寺の石垣のたくましさ」。撮影した写真の中にあるそのポイントが、あなたのテラリウムの「芯」になります。
olmo+のワークショップでアウトプット
olmo.workのサイト内でもご紹介していますが、私たちはワークショップを開催しています。京都で見た風景を、自分なりの解釈でガラスの中に落とし込んでいく。その没頭する時間は、日々の疲れを忘れさせてくれるはずです。
8. olmo+が目指すもの。長田の街に、苔の文化を。
私たちは、単に商品を売りたいわけではありません。苔を通して、もっと多くの人に「足元の小さな命」に気づいてほしい。長田は、震災を乗り越え、人の絆を大切にしてきた力強い街です。そんな街の一角にある olmo+ が、京都の歴史ある自然をライフスタイルに「編集」して届ける。それは、長田の日常に「心の潤い」を添える試みでもあります。
まとめ|苔は、あなたを待っている
京都の観光名所で見つけた苔の風景は、特別な場所だけのものではありません。視線を下げれば、長田の道端にも、あなたの家の庭にも、同じような生命の輝きがあることに気づくはずです。
旅先で出会ったその感動を、日常の中でも感じてみたいと思ったら。ぜひ一度、京都の足元を歩いてみてください。そしてその帰りに、神戸・長田の olmo+ へお立ち寄りください。
あなたが持ち帰った「緑の記憶」を、一緒に育てていける日を楽しみにしています。


